くすりの木

勉強会の内容や、日々の業務で必要な知識を、健忘録としてこのブログに書いていきます。不定期更新です。

NDM-1産生菌の特徴

NDM-1とは

  •  βラクタム剤を分解する、βラクタマーゼの1つ(クラスBβラクタマーゼ:メタロβラクタマーゼに分類される)。
  • ペニシリンセフェム系からカルバペネム系まで全てのβラクタム剤を分解する。
  • つまり、βラクタム剤全てに耐性をもたらす耐性因子である。

 

NDM-1が報告されている場所

  • インド、パキスタンバングラデシュにてNDM-1産生菌の報告あり。
  • 2009年にインドから帰国した人から初めて分離された為、名前の由来は「ニューデリーで分離されたメタロβラクタマーゼ(New Delhi metaro-b-lactamase)」となっている。
  • イギリス、アメリカ、カナダ、ベルギーでも分離が報告されている。
  • 日本ではNDM-1を産生する菌は分離されていないが、その他のメタロβラクタマーゼは多数報告されている(他剤耐性緑膿菌においては約70%がメタロβラクタマーゼ産生の報告あり)。

 

死亡率が高い訳ではない

  •  NDM-1遺伝子は多剤耐性という特徴はあるものの、基本的に病原性を変えるものではない。よって、通常の菌に比べて病原性が明らかに高いという報告は今の所無い。
  • ただし、NDM-1産生菌は大腸菌や肺炎桿菌から検出されていることに注目。日和見細菌では無い為、院内だけではなく市中感染として蔓延する可能性が有り、注意が必要。
  • 免疫不全宿主にNDM-1産生菌が感染した場合、日和見感染症の1つとして治療に抵抗性を示す可能性はある。
  • NDM-1遺伝子が、今後病原性の強い菌(赤痢サルモネラなど)に伝播した場合には、重症・難治例が増加すると考えられる。

 

注意すべきこと

  • インド、パキスタンバングラデシュからの帰国者は腸管内にNDM-1産生菌を保有している可能性が有るため、注意が必要。
  • NDM-1産生菌が分離された場合は、他の多剤耐性菌と同じような接触感染予防策が必要となる。
  • 通常、メタロβラクタマーゼの検出にはSMA試験が用いられるが、NDM-1産生菌では試験結果が陰性になる可能性が指摘されている(原因不明)。菌の最終確認は遺伝子検査が必要となる。
  • 大腸菌、肺炎桿菌などでカルバペネムに耐性を示す株がある場合は、SMA試験が陰性であっても、NDM-1産生の可能性を考えて対応する。

 

 

 

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MHC(主要組織適合遺伝子複合体)について

MHCとは

  • 細胞膜表面に存在する糖タンパク質。自己細胞と非自己細胞を認識するための抗原。
  • 全ての高等脊椎動物に存在する(人間ではHLA抗原、マウスではH-2抗原)。
  • 人間のHLA遺伝子群は、第6染色体上に存在している事から、組織適合遺伝子複合体と呼ばれる。
  • 人間のMHC抗原はクラスⅠとクラスⅡに分けられる。

 

MHCクラスⅠ

  • 赤血球以外の全ての細胞に発現している。
  • ウイルス感染細胞、腫瘍細胞、移植細胞などが主な標的抗原となる。
  • 細胞内感染した微生物由来のペプチドを結合して細胞表面に出て行く事で、CD8キラーT細胞に微生物感染が起こったことを知らせる。
  • キラーT細胞はCD8というクラスⅠと結合する分子を有している。
  • キラーT細胞は、抗原認識後に細胞傷害因子を放出し、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞などを破壊する。

 

MHCクラスⅡ

  • 限られた細胞(マクロファージ、単球、B細胞など)に発現している。
  • 細胞外の異物を取り込んで分解し、異物のペプチドをクラスⅡ抗原に結合させて細胞表面に提示する。
  • ヘルパーT細胞はクラスⅡと結合するCD4という分子を持っている。
  • ヘルパーT細胞はTh1細胞とTh2細胞があり、T細胞の分化・増殖を促進させ、インターロイキンを産生させ免疫反応を高める作用がある。

 

Th1細胞
  • 活性化後、インターフェロンγ(IFN-γ)、インターロイキン2(IL-2)を産生。
  • キラーT細胞やマクロファージを活性化する。
  • 細胞性免疫反応を誘導する。
Th2細胞
  • IL-4、IL-5、IL-10等を産生。
  • B細胞を活性化させて抗体を産生する。
  • 体液性免疫に関与する。

 

 

 

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多剤耐性アシネトバクターについて

アシネトバクターは環境に広く存在する菌

  • 院内にも、自然界にも広く存在する細菌。
  • 院内の床や、医療従事者の皮膚からも分離されるが、そのほとんどは抗菌薬に感受性がある。

 

乾燥した環境でも長時間生存できる

  • アシネトバクターブドウ糖非発酵のグラム陰性桿菌。
  • 乾燥した環境でも長時間生存できる(三週間以上生き残ったという報告あり)。
  • この特徴が、院内感染の原因菌となりやすい理由の1つでもある。
  • 院内から分離された場合、床、ドアノブ、カーテンなどを含めた院内環境の消毒が必要。
  • 基本的にアルコール消毒などの通常の消毒剤が有効。

 

病原性が強いのはAcinetobacter baumannii

  • アシネトバクター属は約30種類存在するが、人の感染症原因菌として分離されるのはほとんどA.baumannii。
  • 何故感染症の原因になりやすいのかは解明されていない。
  • 肺炎、尿路感染症敗血症、創部感染症などの原因になる。
  • 特に、人工呼吸器装着患者に発生するVAP(人工呼吸器関連肺炎Ventilator-associated pneumonia)の原因に注意が必要。
  • ただし、健常人が感染を起こすことは稀であり、ほとんどが日和見感染である。

 

耐性を示す抗菌薬について

 

多剤耐性アシネトバクターに強い抗菌活性を示すもの

  • βラクタム剤とアミノグリコシド系の併用が多いが、有効性に関して十分なエビデンスは無い。
  • コリスチンとチゲサイクリンは強い抗菌活性を示すが、両剤とも日本では承認されていない。

 

 

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テープ療法について。

粉瘤手術後、傷跡を出来るだけ目立たないようにするために、テープ療法を行いました。

使用するのは3M社のテープです。

 

テープ療法のやり方はこちら。

 

※私の場合※

 手術をしたのが夏だったので、テープを貼り続けていると汗で痒くなってしまい、

2ヶ月くらいしか続けられませんでした(;´∀`)

あまり綺麗にならなかったので、写真を載せるのは自粛しておきますm(__)m

 

 

 

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小児のしらみ(アマタジラミ)について。

しらみは不潔だから感染するのではない

  • 日本以外の地域でも幼児・学童に増加している。
  • しらみの感染は、頭髪の接触で簡単に感染する為であり、不潔だからではない。
  • 家族や集団単位での治療と予防が必要になる。
  • アマタジラミの好発部位は頭髪(特に側頭部から後頭部)である。

 

しらみの臨床症状

  • しらみの唾液や糞に対するアレルギーにより、痒みを生じる。
  • 掻爬することで二次感染を引き起こし、膿皮症を発症することもある。

 

しらみの治療

  • スミスリンシャンプーやパウダーを用いる。
  • 頭皮全体に塗布した後、5分後に洗い流す。これを3~4日ごとに3~4回繰り返す。
  • 金属の櫛すきによる有効性のエビデンスは無い。

 

家で出来るケア

  • 出来るだけ髪の毛を短くすると良い。可能であれば剃髪。
  • 頭から離れてたアマタジラミは約3日間生存する。そのため、シーツや服についたシラミが感染することがある。
  • 洗濯、日光干し、アイロンがけを良く行うこと。
  • 家族から再感染することがあるので、家族全員の治療が必要。

 

その他の注意事項

  • スイミングスクール、塾、学校、園などで集団感染することがある。
  • 子どもの心のケアにも配慮が必要。
  • ブラシ、帽子の共有は避ける。
  • 水中でシラミは約半日生存出来る為、必ず処置をしてからプールに入ること。
  • プールでのバスタオル、遊泳帽、ロッカーの共有は避けること。

 

 

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体液性免疫について

体液性免疫とは

  • 異物の侵入によって抗体が産生され、抗体によって異物の排除を行う。
  • 抗体は微生物の付着を阻止、毒素の中和、微生物の凝集、食細胞による貪食を促進させる。また、補体と共に細菌を溶解させる。

 

①抗原

  • 体内に侵入すると、免疫系の細胞が認識し、抗体を産生させる物質。免疫反応性がある。
  • 抗体と結合する部分を抗原決定基(エピトープ)と呼ぶ。

 

②抗体

  • 抗体産生細胞によって産生され、対応する抗原と特異的に反応する糖タンパク質。
  • H鎖2本、L鎖2本からなる基本骨格。分子内はS-S結合でつながっており、還元するとそれぞれの鎖に切断される。
  • IgMではJ鎖が1本存在する。
  • 抗体を含む血清を抗血清と呼び、代表的な抗体として免疫グロブリンがある。

 

免疫グロブリンの分類と特徴】

血清のγグロブリン分画に含まれ、H鎖定常部の違いにより分類される。

 

  • IgG:分子量15万。Ig中の割合は80%を占める。血清中最も量が多く、唯一胎盤を通過できる。オプソニン効果あり。Ⅱ~Ⅲ型アレルギー抗体、Rh抗体補体系を活性化する。

 

  • IgM:分子量90万。Ig中の割合は5~15%。感染初期に現れる。赤血球抗体、ABO式血液型抗体。補体系を活性化する。5量体。

 

  • IgA:分子量16万。IG中の割合は10~15%。局所免疫に関与。消化管や気管などの粘膜面で感染防御に関与している。

 

  • IgE:分子量19万。IG中には少量含まれる。即時型アレルギーに関与。肥満細胞、好塩基球上に受容体が存在する。健常人では最も少ない量。

 

  • IgD:分子量18万。IG中の割合は少量。B細胞の分化に関与している。新生児のリンパ球に存在する。

 

③補体

  • 正常血清中に存在する約20種の易熱性のタンパク質(酵素系)。
  • 抗原抗体反応やある種の物質によって活性化され、免疫反応を引き起こす。

 

【補体の活性化】

  • 各成分の連鎖反応で活性化される。
  • 補体が失活するのは56度30分処理。

【補体の機能】

  • 細胞溶解反応
  • 食細胞の遊走促進作用
  • オプソニン作用
  • 血管透過性亢進
  • 免疫粘着反応

 

④抗原抗体反応

  •  抗原のエピトープと抗体のFab部の結合反応。
  • 結合は非共有結合で可逆的(ファンデルワールス力、クーロン力、静電引力、水素結合、疎水結合など)
  • 選択性が非常に高い反応。
  • 抗原のエピトープの数が多いほど、抗原抗体複合体の安定性は高くなる。

 

【反応の種類】

  • 凝集反応・・・抗体の結合部分が2個以上ある為、抗原を介して架橋を形成し、凝集塊が形成される。
  • 沈降反応・・・大きな凝集塊を形成し、不溶性の沈殿物を生成する。
  • 中和反応・・・毒素、酵素、ウイルスなどが特異抗体と結合して活性が阻害される事を中和反応という。

【主な抗原検出法】

  • ラジオイムノアッセイ(RIA)・・・抗原または抗体を放射標識し、高感度の検出を行う。
  • エンザイムイムノアッセイ(EIA)・・・放射標識ではなく、酵素標識した抗体により高感度の検出を行う。
  • 蛍光抗体法・・・蛍光物質で標識した抗体を用いて、高感度の検出を行う。
  • 赤血球凝集試験・・・血液型の判定に用いられる。
  • 受身凝集試験・・・可溶性抗原をカオリン、ラテックス、ゼラチンなどに付着させ、抗体と反応させて凝集塊を形成させる。
  • ウエスタンブロット法・・・電気泳動により分離した抗原タンパク質をニトロセルロース膜などに転写し、膜上で抗体と反応させ、さらに標識二次抗体と反応させて検出する。

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膜電位依存性カルシウムチャネルについて。

膜電位依存性カルシウムチャネルとは

  • カルシウムイオンを選択的に透過させるイオンチャネル
  • チャネルを通して流入したカルシウムイオンが、セカンドメッセンジャーとして筋収縮や伝達物質の放出等を制御する。
  • 4種類の型があり、ぞれぞれ特徴がある。

 

閾値高いカルシウムチャネル(高電位差で活性化される)

L型・・・持続的なイオンチャネル。このチャネルの開口により流入するカルシウムが、筋肉の収縮や、分泌細胞の分泌を引き起こす。

局在:心筋、平滑筋、神経細胞

アンタゴニスト:ニフェジピン、ベラパミル、ジルチアゼム、ニカルジピン

 

N型・・・神経伝達物質放出を引き起こす。

局在:神経細胞

アンタゴニスト:ω-コノトキシン

 

P型・・・神経筋接合部での神経伝達を引き起こす。

小脳のプルキンエ細胞に選択的に存在する。

局在:小脳、心臓

アンタゴニスト:ω-アガトキシン

 

閾値低いカルシウムチャネル(低電位差で活性化される)

 

T型・・・一過性のイオンチャネル

骨格筋のT管に多く発現している。

心臓のペースメーキングに関与。

局在:心筋、骨格筋、平滑筋、神経細胞、分泌細胞

アンタゴニスト:フルナリジン

 

 

※付け足し。

カルシウム拮抗薬のジヒドロピリジン系はL型チャネルを遮断する。

シルニジピン、ベニジピンはN型チャネルを、

エホニジピン、ベニジピンはT型チャネルを同時に遮断する。

これらのジヒドロピリジン系薬剤は頻脈が少なく、腎保護作用も期待されている。

 

 

 

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