くすりの木

勉強会の内容や、日々の業務で必要な知識を、健忘録としてこのブログに書いていきます。不定期更新です。

椎骨脳底動脈循環不全によるめまいについて。

椎骨脳底動脈とは

椎骨脳底動脈とは、内勁動脈と共に脳に血液を送る動脈のこと。

鎖骨下動脈から分岐し、脳幹、小脳に血液を送る。

左右1対づつある椎骨動脈が頭蓋骨内(橋の後縁)で合流し、1本の脳底動脈となる。

 

椎骨脳底動脈循環不全とは

 椎骨動脈の循環不全により、脳幹・小脳への血流が低下することによっておきる症状。

原因は、頚椎のズレによる血管の圧迫や血圧の低下、自律神経の乱れ、動脈硬化が進んだ事による血管の狭窄によるものが考えられる。

 症状の進行と共に、脳神経傷害の頻度が増加する。

 

 

症状

首を動かしたり、反らしたりすると、脳への血流が減少し、以下の様な症状が起こる。(症状は一過性)

  • めまい(回転性めまいが多い)
  • 舌のもつれ
  • 吐き気
  • 意識傷害(ぼんやりする、意識が遠のく)
  • 視覚障害(物が二重に見える、霧がかったように見える)
  • 上肢のしびれ

※難聴や耳鳴りはほとんど起きない

 

 

治療

脳循環代謝改善薬、抗血栓薬、抗めまい薬

頚椎に異常が有る場合は手術

経皮的脳血管形成術

外科的な血管形成術、もしくはバイパス術

 

 

 

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うつ病の最先端検査と治療法について(テレビ番組『医療の現場』メモ)

 

【概要】

目で見てうつ病かどうか判断出来る検査(光トポグラフィー検査)の登場により、問診だけの診断を補助し、より適切な治療が行えるようになった。

 薬剤を内服しても、約3割の人は症状の改善がみられないことがある。そのような人の場合、自殺願望が強いなど緊急性を有する場合は、最新の治療(無けいれん性通電療法)を行う事がある。また、アメリカから導入された「磁気刺激治療装置(TMS)」も注目されている。

 

光トポグラフィー検査

通常、うつ病の診断は問診のみで行うが、この「光トポグラフィー検査」を行うと、目で見てうつ病かどうかを判断することが出来る。

診断の補助として使う事で、問診だけでは見逃してしまうような症例でも、適切な治療を行う事ができる。

 日本では25施設で実施しており、保険適応にもなっている。

 

【検査方法】

前頭葉の血流量を調べる。

落ち着いた状態でゆっくりひらがなを読む時と、ひらがな1文字から単語を連想させ、思いついた単語を続けて発言する時の血流量を比較する。

(例)と⇒とんび 等

 

健常者は速やかに血流量が増加するが、うつ病の人は血流量が増えない。

躁うつ病の人は、後半になってから血流が増加する。

血流量のグラフを見ることで、うつ病かどうかの判断が可能となる。

 

 

無けいれん性通電療法

 薬剤でも回復せず、緊急性が高い場合に行う事が多い。

通電療法は入院して行う。

麻酔で眠った後、痙攣予防の為の筋弛緩薬を投与し、その後900mAのパルス派電流を数秒間頭部に通電させる。

治療時間は15分。

麻酔をしている為、痛みは無い。

1日おきに週3日行う。4~5回目から効果が出てくると思われる。

 

 

磁気刺激治療装置(TMS)

機能が低下した背外側前前頭野(DLPFC)を刺激すると共に、過剰活動の扁桃体を抑制する。FDAの認可もおりている。

30秒ごと4秒間の磁気を当てる治療で、麻酔は不要、入院の必要も無い。

痛みや違和感は無い。

40分の治療を30回行う事で一つの目安となる。

 

 

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ヒルシュスプルング病について。

概要

ヒルシュスプルング病とは、腸管の神経節細胞が先天的に欠如している為、消化管の動きが制御できず、重い便秘症や腸閉塞などの症状が起きる疾患。

 無神経節腸管の長さは、約80%が肛門からS状結腸までであるが、大腸全てや小腸まで及ぶ例もある。

 

症状

 新生児、乳児期の急性の腸閉塞、重症便秘。

お腹の張りが非常に強い為に吐いてしまったり、重い腸炎が起きることがある。

腸の壊死や穿孔が起きて非常に危険な状態になることもある。

腸管の蠕動不全や異常な拡張による細菌の異常増殖が原因で、敗血症ショックが起きる事がある。

 

診断

 注腸造影検査、直腸肛門内圧測定検査、直腸生検検査で診断する。

 

 

治療

 治療には手術が必要。

神経節細胞の無い腸を切り取り、正常な腸を引き下ろして肛門部に接合させる(結腸プルスルー手術)。

開腹手術の他に、腹腔鏡や経肛門手術などが行われる。場合によっては小腸移植の適応になる症例もある。

 

 

 

 

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甲状腺ホルモンについて

 

 

甲状腺ホルモン】

トリヨードチロニン(T3)

チロキシン(T4)

  • ペプチドでもステロイドでもない低分子物質で、アミノ酸であるフェニルアラニンから生合成される。分子内にヨウ素原子を持つ。
  • TSH(甲状腺刺激ホルモン)により甲状腺から分泌される。
  • 甲状腺ホルモンは、基礎代謝、発熱、発汗、自律神経調整など多数の機能を担っている。
  • トリヨードチロニンはモノヨードチロシンとジヨードチロシンが縮合。分子内にヨウ素3分子。
  • チロキシンはジヨードチロシン2分子が縮合。分子内にヨウ素4分子。
  • 甲状腺から血中に分泌されるT3は20%であり、T4よりも活性が強い。残りの80%は甲状腺からT4の形で分泌され、抹消組織でより活性の強いT3に変換される。
  • 極めて疎水的な性質を持ち、低分子であるためにタンパク結合しやすく、血中では遊離型は少ない。
  • 結合するタンパクはTBG(チロキシン結合グロブリン)で、これも甲状腺から分泌される。
  • 自律神経のバランスをとる意味でも、甲状腺機能は一生涯にわたって必要。甲状腺を摘出すると、T3、T4だけではなくTBGの合成も低下するので、遊離型T3、T4の増加で心悸亢進などの副作用が起きる。
  • 甲状腺機能亢進症:バセドウ病(グレーブス病)
  • 甲状腺機能低下症:橋本病(慢性甲状腺炎)、甲状腺摘出など。

 

甲状腺ホルモンの生合成】

  1. チログロブリンチロシン残基が甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)によりヨウ素
  2. ヨウ素化されたチロシン残基がTPOによりチログロブリン上で縮合
  3. チログロブリンがろ胞上皮細胞に再吸収顆粒としてエンドサイトーシスで取り込まれる。
  4. 再吸収顆粒のチログロブリンが、リソソームのタンパク分解酵素により分解され、トリヨードチロニンやチロキシンが遊離する。

甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)

  • 甲状腺ろ胞細胞の膜タンパク質。抗甲状腺薬(チアマゾール、プロピルチオウラシル)は、この酵素に結合して、その活性を阻害することで作用を発揮する。
  • 自己免疫性甲状腺疾患の自己抗体の抗原の1つ。

 

 

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慢性副鼻腔炎の成立と治療について

 

 

【鼻腔】

  • 鼻腔の周囲には、上顎洞、篩骨洞、前頭洞、蝶形骨洞の4対の副鼻腔が存在する。
  • 副鼻腔は自然口と呼ばれる直径2~3㎜の穴で鼻腔とつながり、常に副鼻腔内の換気が行われている。また、内部の粘膜は線毛に覆われ、ウイルスや粘液等の排泄機能を有している。

 

【炎症の悪循環】

  1. ウイルスや細菌感染を発端に、副鼻腔周辺の粘膜が炎症を生じ、サイトカインを放出する
  2. それにより、副鼻腔粘膜の粘液の分泌が亢進される。
  3. 線毛機能の低下や、自然口の閉鎖、組織障害が起こり、副鼻腔粘膜の換気・排泄障害が生じる。
  4. 副鼻腔において、鼻腺の活発化による鼻汁の過分泌、細菌によるバイオフィルム形成、好中球集積、気道上皮傷害因子の産生が起きる。
  5. 結果、炎症が更に悪化する。

 

慢性副鼻腔炎は、この炎症が治癒しないまま3ヶ月以上持続し、慢性化した状態の事を言う。

 

【治療】

慢性副鼻腔炎に対しては、マクロライド療法が第一選択。

 ※日本鼻科学会作成「副鼻腔炎診療の手引き」参照。

 

 

マクロライド療法が効果不十分な病態】

  • アレルギー性炎症が主体である症例
  • 気管支喘息を合併し、好酸球浸潤を有している症例
  • 中鼻道が高度に閉鎖している症例
  • 大きな鼻茸(ポリープ)を有する症例
  • 長期投与中に急性増悪を生じた症例

※アレルギー性炎症合併例では、抗アレルギー剤とマクロライドの併用でかなりの有効性が期待できる

※高度の多発性鼻茸を伴う場合は、ESS(内視鏡下鼻内副鼻腔手術)の適応となる。

 

 

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腫瘍の分類~良性?悪性?~

 

【腫瘍とは】

腫瘍とは、過剰な自立性をもつ新生細胞群(腫瘍実質)と、それを支える組織である腫瘍間質からなる。

腫瘍は 良性か悪性かに分類される。悪性腫瘍は更に、癌腫か肉腫かに分かれる。

 

良性腫瘍

  • ある程度の大きさになると成長が止まり、転移及び浸潤性の増殖は無い。
  • 手術切除が可能であり、再発しない。
  • 必ずしも予後が良性とは限らない。

 

【悪性腫瘍】

  • 放置すると増大し続け、浸潤性の増殖、転移をするものが多い。
  • 早期治療により再発は防げる。

 

  • 癌腫・・・悪性腫瘍のうち、上皮性組織に起源を持つもの。胃がん、すい臓がん、皮膚がんといった臓器名で区分することが多い。組織学的には腺癌、扁平上皮癌、移行上皮癌、未文化癌と分類する。発育速度は早く、高齢者に多い。リンパ移行を示す。

 

  • 肉腫・・・悪性腫瘍のうち、非上皮性組織に起源を持つもの。繊維肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫、横紋筋肉腫、血管肉腫、リンパ管肉腫など。発育が早く、浸潤性、破壊性があり、若年者に発生するものが多い。

 

 

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慢性便秘症の診断と治療について(勉強会メモ)

 

 

 慢性便秘症は2つのタイプに分けられる。

  1. 大腸通過遅延型
  2. 便排出障害型

 

大腸通過遅延型の場合は、食物繊維の摂取、酸化マグネシウムを内服する。

便排出障害型の場合は、排便造影検査、大腸通過検査を行う。レスキューとして、刺激性下剤を使用する(出なかった日の寝る前に飲む)。

 

《大腸黒色症》

長期のアンスロキノン内服で、大腸黒色症になることがある。

これはメラニンの沈着ではなく、リポフスチンがマクロファージに取り込まれる為に生じる。悪い副作用ではない。

 

《脊髄損傷の場合》

直腸の感覚が無いので、時間を決めて排便すること。

1日1回レシカルボンを使用してOK。1~2週に1階、浣腸してもOK。

ストマにするのも1つの案。下剤を使うと便失禁になるので、補助的に。

 

ガスモチン

日本、アメリカでは認可されていないが、ヨーロッパでは5-HT4刺激剤を慢性便秘症に使用している。

硬度な便秘には効果は無いが、軽い大腸通過遅延型であれば効く。

ニフレックの前後に2錠づつ飲むと、前、下部消化管の機能改善に効果がある。

 

《その他のメモ》

  • 排便する時は前かがみになった方が良い。
  • 非刺激性の薬剤であれば、毎日飲んでも良い。
  • 便は毎日出す必要は無い。2日に1回でOK。
  • ラクツロースは成人の適応無し。古い薬なので、今後適応が追加になることはないと思われる。
  • 刺激性便秘薬が効かなくなったのであれば、それは「慣れ」ではなく「高度便秘」である。
  • オピオイド使用中の便秘は、薬剤性の大腸遅延型。原因は違うが、治療法は同じ。

 

 

 

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